8tth
Burzum / Fallen
女性!!

Track List :

01 Fra Verdenstreet
02 Jeg Faller
03 Valen
04 Vanvidd
05 Enhver til Sitt
06 Budstikken
07 Til Hel og tilbake igjen

評価 … ★★★★★★★★★☆(仏盤)

かの有名なノルウェー人Varg Vikernesによる一人ブラックメタルなBurzumの、2011年3月に発売された8thアルバムです。前作Belusが2010年3月発売ですので、ちょうど1年振りのアルバムということになります。嘗て逮捕され、刑務所に投獄されるまでの1990年代半ばまでの期間でも精力的な制作活動(犯罪活動とは別に)を行っていたVargですから、娑婆に出た現在も再びリリースを続けて行くのでしょうか。音楽的内容とともに要注目です。

さて、今作Fallenですが、作詞/作曲はもとよりヴォーカルと全ての楽器がVarg自身によりレコーディングされています。曲タイトルは、これまたVarg自身による英訳が存在しますので掲載します。

01 From the World Tree
02 I Am Falling
03 Fallen
04 Madness
05 Each Man to His Own
06 The Message
07 To Hel and Back Again

7曲目の『Hel』とは北欧神話の死者の国、ヘルヘイムのことです。

1曲目はアルバムのイントロダクションといってよいでしょう。語りとSEのみによって構成されています。2曲目ですが、Burzumお馴染みの全世界を凍り付かせ、太陽の光を遮らせるかのような、寒々しく乾いたギターリフで始まり、呻き声ヴォーカルが入りますが、すぐにクリーンヴォイスでの歌唱となります。前作Belusを強く想起させられます。おそらく、Vargは今のBurzumのあるべき姿を完成させたと言えるでしょう。語りなどのパートを挟みつつも、朗々と歌い上げるスタイルは前作からの純然たる深化であり、路線の踏襲でもあります。また、退廃的で単純なメロディの反復は前期Burzumでも今のBurzumでも見られるものであり、ある種のスタイルの単純な変化ではないことも確かです。

3曲目、Valenも基本的には同じ構成で作られています。聴く者をあらゆる方向から突き刺すかのような鋭利で刺々しいギターのサウンドに乗せて、悲壮感漂わせる呻きと時には被さるようにも歌われるクリーンヴォイスの組み合わせ。これは既にブラックメタルの枠を遥かに越えており、アンビエントとの境も明確ではない、明かりの殆ど存在しない奥深い森の中にいるかの如き不明瞭さです。聴き手を僅かな力でも圧倒すると同時に、極度に不安にさせる威力も持っていると言えるでしょう。その面に於いて、前作Belusを完全に超越しておりやはり正常進化なのであることを伺い知るのです。

続く4曲目Vanviddでは、冒頭からの得体の知れない『何か』に追われるような、どこまで走っても付いてくるかのような軽い音でテンポ良く疾走するドラミングを聴くことが出来ます。Vargの提示した主題、『狂気』。この世界に飲み込まれた者は誰一人として逃れることが出来ない、まさにそのような者の絶叫を4:30〜辺りから耳にすることになるのです。そして狂気の世界に捕われた者はVargだけではありません。この音楽を耳にする者全て、そうあなたを捕らえて放さないのです。狂気はいつまでも無慈悲に追って来るのです。まるで呪詛のような、クリーンヴォイスでの歌唱は最早呻き声による歌唱と同等のじっとりした攻撃力を持っています。

次いで5曲目に配置された、Enhver til Sittですが誰も止めることが出来ない、誰も逃れることの出来ない、ひたすら焦らされるかのようなリフが幾分の変化のみで最初から最後まで続くのです。この呪縛は恐ろしくただただ、そこに存在するのです。雨がただ降り注ぐかのように、ただただ単調に繰り返されるのです。そして、ヴォーカルも苦しみをあげ何度も同じ歌唱を繰り返すのです。

6曲目のBudstikkenはこのアルバムで最も長い10分を越える大作です。スロウに流されるギターリフとドラムのサウンドによるイントロを越え、Vargのヴォーカルパートとなります。幾度もの反復を越えて待っているのは浮かび上がってくる呻きヴォーカルによる明確なメロディを伴った歌唱。ここに新たなる希望を見いだすでしょうか。それともこれは偽りの希望なのでしょうか。そもそもここには希望というものが存在するのでしょうか。繰り返される音像は寂し気なクリーンヴォイスでの歌唱と終わりの見えないギターリフ。あなたはその先に何を見ますか。

アルバムのラストを飾るのはTil Hel og tilbake igjenです。ここまでの曲とは全く違った趣のイントロで曲は始まります。誰も知ることの出来ない儀式が始まるかのような、一定のテンポで鳴らされる太鼓音、それに続く金属の共鳴音、そして低く絞られた地の底から湧き出るかのような語り声。そして再び始まる太鼓の音。次に続くのは後には何も残さないような寂寞感のみのギターのメロディと金属音。そして無音となりアルバムは幕を閉じるのです。

ここに来て再び全世界から注目を浴びることとなったBurzumですが、なにかを持ってして勝負に出ているのではない、ありのままのVargの姿がここにあります。音楽とは何かを問い続ける姿は、初期とは一切変わらないまま今のBurzumが存在しているのです。ここに刻まれた証しを、是非とも受け取ってください。

ちなみに、退廃的なジャケットは19世紀フランスの画家ウィリアム・アドルフ・ブグローによるものです。

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Best tune : Vanvidd

聴きながら情景を思い浮かべましょう。何のかって?それは、聴き手が思い浮かんだもので良いのです。正解などここには存在しないのですから。そこで何かを見つけることが出来ますか。
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