Throne of Chaos / Pervertigo
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Track List :
1. Johnny B. Dead 2. Pervertigo 3. The System 4. No Nothing 5. Fistfucking & Alienseed 6. Truth & Tragedy 7. Sleep 8. Reason to Be 9. Game 10. Night Crawler
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評価 … ★★★★★★★★★☆(仏盤) 北欧メロディックデスメタル界が大きく動く、正に激震の一年となっている2002年。しかしその方向性は兎も角、未だに衰えることを知らない、向上心に満ち溢れる作品ばかりで、今後も彼等がヨーロッパの舵取りであることは紛れもない事実であろう。しかし、そんなその界隈の大物の中(音楽業界的にいうと中堅)で影に隠れてはいるが、実はとんでもない爆弾を落としている気がしなくもないバンドが存在する。それがここで紹介するThrone of Chaosである。1stアルバム「Menace And Prayer」では、例えるならChildren of BodomがIn Flames特有のクサミのある哀愁を撒き散らしているような楽曲な感のあった作風で、フォロワーなのはわかってはいるが、とても楽曲自体が良く出来ており、個人的には大変気に入った一枚であった。その作品から今作で何が起きたのかは知らないが、別バンドなのではないか?と思えるくらいの変化をしており、初めて聴いた時は我が耳を疑った。そういう意味でいうとこのバンドのやった変化というのは、あまりにも変わり過ぎており、改革を起したといえばいいだろうか、前作が好きなファンからは批判を浴びる対象となるであろうものを作ってしまったと思う。
しかしこの改革は今はどうであれ、今後のヨーロッパのメタルシーンに限ると「鍵」となる一枚になる可能性を秘めた、将来に輝きを感じる潜在的な、そして先駆的なものをとても感じる作品でもある。それはメロデス界のバンドがクリーントーンを導入しようとすると、どういうわけかここのところのメロデスバンドの視線はアメリカヘ向いていたわけだが、このバンドは決して新しくはないものの、何処からどう聴いてもヨーロッパのバンドにしか現状では作り得ない、煌めき、北欧的な透明感、端々から感じられる叙情的且つ哀愁の美旋律、メロデスならではの悲哀感などが融合し、渾然一体となり劇的に展開して迸る様は画期的である。しかもこういうバンドに有り勝ちなヴォーカル面での弱さは微塵も感じさせないのも素晴らしい。クリーントーンを担当するのはゲストではあるもののDream EvilのNiklas Isfeldtであり、この人ならではな繊細な歌唱はこのバンドのスケールの大きさを感じさせる面で大変貢献していると思う。そして前作のバンドの状態からメンバーチェンジがあったわけでもないのにデスヴォイスまでもがゲストというのは何の意図があるのかはわからないが、こちらも特に問題を感じさせないアグレッシヴな声を聴かせている。そんなわけでヴォーカル面でも表現的な面から見ればIn FlamesやSoilworkとは比較対象にはなり得ないものだと、一個人としては思う。
Children of Bodomらしさが薄れているから、余計に目立ってきているIn Flames的なメロディはキャッチーでもあり巧いこと消化出来ていると思えるし、キレを感じさせるスラッシーなリフも恰好良いし、若干だがプログレッシヴなメリハリのある展開の組み立て方にしても前作同様曲作りの巧みさは、このバンドはやはり長けている。
本編最後の曲の終わり方が美しくないので、どうしても納得出来ないものがあるが、緩急を使い粒揃いでコンパクトに作られた楽曲は全体的に飽きさせることもないし好印象である。しかしあえて苦言を書くならメタルファン全体に訴えられるだけの突き抜けた曲がないのが残念でならない。その辺の課題は次作に期待したいところだし、このままの路線を歩んでいってくれれば、ヴォーカルという問題は残るものの、今後もかなり有望な存在としてシーンを代表するバンドになるだけの雰囲気は感じられるし、今のままアメリカへ進出を果たすのも、どういう反応を示すのか凄く興味深いことであり、メロディックパワーメタル的でもあるが、メロデス的でもあるこのバンドがアメリカでどう影響を及ぼすのか、そういう意味を含めてこの完成度の高い一枚が今後「鍵」になるのではないかと個人的には思う。
それにしてもNiklas IsfeldtはDream Evilで歌っているよりもこっちの方が哀愁が前面に出ているせいか、声質的に無理がなく嵌っているような気がするのは私の気のせいだろうか?
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Best tune : Pervertigo
タイトルトラックなんですが、初っぱなからIn Flamesを髣髴させるメロディは失笑ものなのだが、サビ部分でのこのバンドならではのクサイメロディに乗って、ドラマティックに叙情的に展開していくのが良い。
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